博士の声は淡々としていて心地良い。私は一言一句聞き逃す訳にはいかない。

ただ集中して聞いていると、時々意識が他に飛ぶ。

タクの事、カズヤの事。そして遠い昔の事。

そして、それら全てが私の背中を押す。私を動かす。

博士の説明はひたすら続く。彼は素直で丁寧な人だから、途中をはしょると言う事をしない。

私は聞く。博士と始めるこの大事な仕事に失敗は許されないのだ。

博士はふと立ち上がると部屋のブラインドをジャーっと上げた。

「一息入れましょう」そういいながらポットに入っているコーヒーをカップに注いだ