「どうぞ」 にっこり笑って、ソファーに座っていた私に紅茶を差し出した。 私は、その紅茶を見つめたまま、動かずにいる。 その横で、彼はごくごくと紅茶を飲み干していた。 それを見て、私は彼がさっき言った言葉を思い出す。 “何があっても、千紗は殺す対象にはならない” その言葉の真意が分からない。 お互い、昨日初めて言葉を交わしたはずだ。 名前しか知らない。 年齢、性格、どこに住んでいるかだって知らなかった。