その日も暑かった。
昨日は雨だったため、まだ所々に水溜りが残っていて蒸し暑い。
蒸し暑いのが一番辛い、と思いながら彼ははぁ、と溜息をついた。
「どうしたの? 幸せ逃げるよ」
彼はいつものかき氷屋さんまでの道を彼女と歩いているところだ。
「もうないから不幸しか逃げないよ」
「それもう希望的観測じゃん」
「そうですけど何かぁ?」
――うわ、ムカつくぅ。
彼女が笑いながら彼の肩を軽く叩いた。
彼も笑いながら彼女の肩を軽く叩いた。
傍から見れば、ちょっとイラッとするくらいイチャついている若いカップル。
そんな風に見えるだろうか、と彼は少し微笑んだ。