この田舎では、三十度越えの真夏日はもう二週間以上は続いている。
彼は毎日外に出て蒸されているが、蒸発しそうなことなど一度もなかった。
やはり自分は普通の人間で、なくなったりなんかしない、と彼は安心していた。

「そっか、分かった」

不意に彼女が声を上げた。
唐突なのは彼女の癖のようだ。

「なくなったら戻らない代わりに、簡単にはなくならねぇぞっていう、一種の根性なんじゃない? それって」

根性。彼はぼそっと呟いてみた。
根性、なのだろうか、なくならないのは。
彼は自分に確かにあるらしい根性を確かめるように、何度も根性、と呟いた。