~校内恋愛禁止ですっ!!~


私もすごく残念。

すっごく素敵な人と出会えたと思ったのに。

ちなみに、素敵は人は岸谷さんだけだから。



「じゃあまたいつか、どこかで会えたらいいね」

「二度とひかるに襲われんじゃねぇぞ」

「はっ、はい!!」



手を振りながら去っていく2人を見送った。



岸谷さんと天上さんかぁ……。

優しい人だったな。

天上さんはちょっと怖いけど……。



きっとまたいつか会えるよね。

思い浸っている私の横に、いつのまにか雅さんがいた。



「じゃあね、めぐ。また今度会おうね」



そして先に行った2人を追いかけていった。



ふんっ!!

誰があなたなんかに会いたいって思うのよ。

二度とごめんよ!!

3人が去ったあと、私は自分の唇を軽くなぞった。



『これ、僕にぶつかった代償だからね』

『もしかしてファーストキスだった?』



あの言葉が頭をよぎる。



私の……ファーストキス……。


ほんと、サイテー……。

いろいろハプニングはあったけど、なんとか新しい職場に到着。



周りを見渡す限り男、男、男。

男だらけ。



今日から転勤が決まる日までこんなところで働くことになるなんて……。

考えるだけでため息が漏れた。



「どこかに女性の教師なんていないかな……」



望みの少ない希望に期待し、女性を探した。



「あのぉ……」



後ろから急に声をかけられた。

幼い子どものようなとっても可愛い声。

もしかして……!!

私はすぐさま振り返った。

……っ!?



予感的中!!



私の後ろにいたのはとっても可愛らしい女の子。

くりっとした赤色の目に、ボブな茶髪がとっても似合っている。

身長も私より少し低い。

朝にあった最悪の男、雅ひかるよりも低いかもしれない……。



ここは男子校だし、彼女はきっと教師だろう。



神様は私を見捨てなかった!!

こんな可愛い子とめぐり合わせてくれてありがとう。



これからの休日の予定の妄想がどんどんと膨らむ。



「あの、すみません……」

「はいっ、なんですかっ!!」



彼女の呼びかけに急いで我に返った。

だってこんなに可愛い子をみたの初めてだし……。

「もしかして須藤めぐさんですか?」

「はい。そうです」

「僕はここで働いている一之瀬悠と言いいます。今日からよろしくお願いしますね」



彼女はそう言って深々とお辞儀をした。



とっても礼儀正しい子なんだな……。

私の名前まで覚えてくれているなんて……。



しかも一人称が"僕"だなんて。

可愛い上に僕っ子なんて、どれだけ私をきゅんきゅんさせれば気がすむのよ。

もう妹みたいに可愛がってあげたいな…。



「こちらこそよろしくね、悠ちゃん」

「えっ……?」



彼女はいきなり驚いたような顔をした。



私何か変なことでも言ったかな?

普通によろしくって言ったつもりなんだけど。



「あの、何か勘違いしてるみたいですが僕は……」



「お姫……、朝からなにやってんの?」

「あ、菊池先生おはようございます。あとお姫って呼ぶのはやめてください」

「まぁいいじゃねーか」



いつのまにかチャラチャラな男が悠ちゃんに接近していた。

悠ちゃんは何も思っていないのか、会話を続けている。



会話を続ける2人にいかにも色気ムンムンの女の人が割りこんできた。



「ねえ、勇斗……」

「わりぃな、また今夜」



そういって2人は軽くキスを交わす。



公衆の面前でハレンチな……。

ここは学校よ!!

登校している生徒だっていっぱいいるのに。



彼の耳には3個ほどピアスがついている。

そして長い紫の髪が一層にチャラチャラ度を主張している。




「今日で何人目なんです、学校に女の人を連れてくるの」

「えっと…9人目だったか」

「19人目です」

「そっかぁ……。で、お前は誰?」

悠ちゃんから視線を外し、私のことを指差して聞いてきた。



なんだか苦手なタイプ……。



「今日からここで働く須藤といいます」

「あぁ、お前が男子校で働きがっているヘンタイ女か」

「誰がヘンタイよっ!!」

「なんだもっとチャラい感じのやつかと思ってたけど、以外に平凡で地味な奴だな」



なんだか変な勘違いされてる。

最悪……。

こんなやつとも同じ職場だなんて。



まぁ、悠ちゃんがいるからいいか。



「悠ちゃん行こう。こんなの相手にするのはめんどくさいよ」

「えっ、でも……」

「いいからいいから」



私は彼女の細い手首を掴んでぐいぐいとひっぱった。

だけど彼女は一向に進もうとしない。

「なぁ須藤だったか……?」

「そうですけど」

「お前何か勘違いしてねぇか」

「何をですか」

「そいつ男」

「は?」



彼が指差す方向を目で追う。



その先にいるのは悠ちゃんだけ。



「いやいや私をからかわないでください」

「いやマジだって……」

「違うよね。悠ちゃんは女の子だよね」

「僕は男ですが……」



「いやさっきあの人に『お姫』って呼ばれてたじゃ……」

「あれはオレが勝手に付けたの。女みたいだから」

「ということは……」



「僕は男ですよ」