あ…一瞬寂しそうな顔したの、

あたし見逃さなかったよ。




やっぱ好きだなぁ。

本当に。




年下だけどそんなの

関係ないって思うよね。




年下はちょっと…って

友達はみんな言うけど

玲央くんなら全然OKだよ。




「ん。また明日ね」









あたしが片方の手を挙げて

軽く手を振ると

玲央くんは、その腕を掴んで。




あたしの唇に、

ちゅっとキスした。




「…っ」


「また明日な」




ふわっと笑って、

『明日な』って言う玲央くんに

胸が締め付けられる。




また明日、あたしは

玲央くんと会えるんだから。








中学校のころは

早く土日になってくれないかなぁなんて

思ってたけど…。




今は休日がこれでもかってほど嫌だ。




ヒミツの恋愛だから、

軽々しく学校のみんなが行きそうな

映画館とか、ゲーセンとか行けないし…。




デートも数回しかしたことない。




明日会えるっていう事実だけで、

あたしはもう、幸せだよ。










「今日も冷血ボーイ、

 ムスッとしてるー!!」


「その感じがたまんないよね〜」




翌朝の登校中そんな声が

下駄箱から聞こえて

ハッと顔を上げた。




前を見ると、歩いていたのは玲央くん。




そして、あたしの後ろには

玲央くんの話をしている多分先輩たち。










つまりあたしは、

玲央くんと先輩たちに

挟まれてしまってる。




やだ…。

玲央くんはあたしの彼氏なのに。




こういうとき、

あたしの立場がわからなくなってしまう。




秘密にしなきゃいけないっていうのは

頭ではよくわかってるつもり。




だけど…。







玲央くんの話をしたくても、

あたしは先輩たちみたいに

あんなに堂々と話せない…、

話しちゃいけない…。




そんな風に思ってしまうあたしは

ワガママなのかな。





【今日も朝からモテモテですね】



少し嫌味で玲央くんにライン。

可愛くないな、あたし…。








玲央くん、あたしが後ろにいるって、

知らないから驚くかな?




【黙れ。見えてんの?今どこ】




先輩や後輩に何か言われてる時の

玲央くんの機嫌は最悪。




あたしに八つ当たりしないでよねー。




まぁ、嫌味言い始めたのはあたしだけど。








【玲央くんのうしろ】


【何でいんの?いつもいないのに】


【ラブパワー(笑)】




でも、こういう秘密のラインをしたり、

秘密基地があったり。




そういうのをしてると、

顔が無意識に緩んできちゃって

さっきのなんて忘れちゃうの。



もう、あたしってなんなんだろう。




ほんと、ワガママなだけじゃん…。








玲央くんの背中を後ろから

ぼーっと眺めていると、

いつの間にかラインの通知がきていて。




【やっぱ今日秘密基地来て。

 会いたい】




…もう。ほんとに。




この4文字だけで

こんなにも嬉しくなって

心も体もぽかぽかしてきちゃう。




【うん、いくね(^^)v】




と返信してケータイをポケットに入れた。