優君はきっと心配してくれてるんだろう。

 でも翼が私の隣にいないのが現実。わたしはそのことを受け入れられない。

 だから一度も翼のお見舞いにいってない。

 行きたくても行けない。

 「行けないのはわかる。でも翼はお前を待ってるのかも知れない。お前が行ったら目を覚ますのかも知れない。」

 「私だって・・。行きたいよ。」

 私は泣いていた。

 「この先会えないかも知れない。今日翼は死ぬかも知れない。だから迷ってるひまじゃないと思う。」

 優君の一言を聞いて私は何も返さなかった。

 黙ってると優君の電話が鳴った。

 「はい・・・。分かりました。すぐ伺います」

 優君は電話を切った。

 「繭・・。翼が死んだ。」

 「え?翼は死なないんでしょ?」

 「いきなり急変して、翼はなくなったらしい・・。」

 私は何をやっていいか分からなかった。気づいたときには翼の病院にいた。

 「繭ちゃん・・。翼に話しかけてあげて。翼本当に繭ちゃんのコトが好きだったのよ。手術受けたのも、"繭とこれからも一緒にいたいから俺は受ける"って行ってたのよ。翼は助かると信じてたのよ。」

 翼のお母さんは泣かずにわたしに言った。

 「翼。なんで逝っちゃうの?私たちこれからでしょ?翼のおかげで私幸せだっったよ。こんな私を好きでいてくれてありがとう。翼がやりたかったこと、翼が食べたかったもの、翼が見たいもの、翼が行きたいところ、私がかなえるからね・・・。翼の分まで私は幸せになるからね。わたしがおばぁチャンになったら翼に会いに行くからね。」

 私は最後まで笑顔で言った。翼は笑えって言ってるような気がしたから。

 私は葬式にもでた。泣かないと決めたから泣かなかった。

 翼のお母さんに話しかけられた。

 「繭ちゃん。これ。翼が繭ちゃんに渡してほしいって・・・。」

 「ありがとうございます。おばさん。もう泣かないでください。翼は頑張ったと思います。私たちが翼の分まで幸せになればいいんですよ・・。」

 「ありがとう・・・。」

 翼のお母さんは翼が死んで初めて泣いていた。

 私は肩をさすることしかできなかった・・。