クスリ、と微笑んだら案の定。

バスケットボールがブウン、と飛んできた。

「きゃっ?」

すぐ横で跳ね返ったバスケットボールに彼女が驚く。

テン、テン、と転がっていくそれを右手で拾い上げ、彼女に投げ渡した。

「えっ? えっ?」

何が起きたのか分かっていない彼女に、僕は彼女の後ろを指差す。

「それ、彼に返してあげるといいよ」

「えっ?」

バスケットボールを手に振り返った彼女は、体育館からこちらを見ている彼と目が合う。

「あ、あわわわ……」

目が合っただけで動揺するかわいらしい彼女に、

「頑張って」

そう言い残し、その場を去る。



ただ見ているだけでいいなんて。

当たり前にやってくる明日を信じているからこそ出来るんだ。

……そうじゃない。

当たり前にやってくる明日などない。

だからこそ、その日その日を大切に、自分の想いに正直に……我侭に生きるべきなんだ。