「それは……辛い、です」

「うん。見ているだけって、辛いよね。だったら、少し彼の見えるところへ行ってみたらどうかな? 君もバスケ部に入るとか、マネージャーになってみるとか」

「え、ええっ、そんなっ、私にそんなこと務まりませんっ」

「やってみなきゃ分からないさ。君のように一途な女の子なら、僕は出来ると思うけどね」

「そ、そうでしょうか……」

「うん。それに……頑張ってみる価値はあると思うな」

にっこりと彼女に微笑みながら、チラリと体育館の方を見る。

いつも彼女が見つめているバスケ部員が、先程からずっと僕のことを怖い顔で睨んでいる。

……うん。頑張ってみる価値はありそうだよ。

「自分で一歩を踏み出す勇気が足りないなら、少しだけ魔法をかけてあげよう」

「えっ?」

驚く彼女の頭にポン、と手を乗せて、微笑みながら少し屈んでみる。

……さあ、体育館の彼からはどんな風に見えるかな。