「お嬢様。
……いい加減起きないと喰っちまうぞ?」


急に豹変するその言葉遣いに
驚くことはない
いつものことだ


しかし今は夢の中にいた男の正体が
分かるところだったのに
それを邪魔されたのだ


うっすら目を開け
声をかける男の位置を把握する
男は思った通り、ベッドのすぐ傍にいた



執事服に似合わない赤毛の髪がやけに
視界を覆う



それもそのはず


だってこいつは!
さっきの言葉を
実行しようとしてるんだから!




雫は顔を近付けてくる男の足を蹴った