「なんで、“お前”が……!」


いるんだ、と。
私の頭先で空気のソファーに座るように、止まっていたそいつに叫んだ。


私の時を止め、私のしたことを無為にし、私に――何かをするべく来たものは、薄く笑っている。


思えば――
私はこいつの笑う以外の顔を見たことがない。


泣きも怒りもしない。悲しいことも苛つくことも、この世界には存在しない、“おかしなことだらけだと”言うそいつは、こんな時でも笑っていた。


雨に打たれ、前髪がそいつの目元を隠していたが――長年そいつを見てきた私にとっては、“どうせまた、いつも通りか”と涼しげな眼のパーツが連想できた。