時計を見上げて憂鬱そうにぼやくナツメは、1年生ながらバスケ部のレギュラーに選ばれていて、嫉妬した先輩方からの風当たり厳しいのだと、香奈ちゃんから聞いたことがあった。
運動部の事情もバスケ部のことも先輩の恐ろしさも、中学高校と帰宅部で、家に帰ってゲームに熱中しているだけのあたしにはわからんけど。
数学の補習が始まってから早30分。
教科担任の教師から渡されたのは薄っぺらい更紙にプリントされたテスト範囲の問題。たくさん。
1時間後に様子を見に来るから全部やっとけよ、と半ば自習的な補習だけど、
「――テストで20点もいかなかったあたしにこの問題がひとりで解き終われるとでも思ってんのかあああ!」
思わず叫びたくもなるってもんよ。
「うるさい宮内」
「……え、ナツメもう裏いってんの?」
「まじ暇なお前とは違うからな、俺は」
「あたしだってこれからレンくんと……」
「きめえ」
「ひでえ」
答えが合ってるか間違ってるかは別として、ナツメのプリントは裏面の半分まで終わっている。つまり、あと4分の1。