「……ナツメはさー、地味にモテるんだからさー、いろんな女の子と話せばいいのに」
「興味がない奴とは話したくない。女ってめんどいし」
「ほう。……まさかホ」
「それ以上言ったら殺す」
ナツメは変わってる。
“じゃああたしは?”という質問はせずに、相槌を打って苦笑した。
どうせ帰ってくる答えは同じで、「お前は女じゃねえだろ?」っていうだけだ。
「そんなことより手え動かせや。そんなんじゃ一生終わんねーだろ」
「問題はそこですよね」
持っていたシャープペンシルの動きが止まっていたことに気付き、数字や変な記号が並べられている手元のプリント(もはや暗号なんじゃないかと思う)に渋々視線を戻す。
サインコサインタンジェント。どこの呪文ですかそれ。開けゴマ。
「ほんと、マジでありえね。お前と二人で放課後に補習とか」
「赤点とったのは自分が悪いんでしょ」
「うるせー。……あー、ヤバい。部活1時間以上遅れたらまた先輩に怒られる」