「……あのさ、」
「ん?」
その沈黙を最初に破ったのはあたしの方で、頭一つ分ほど背の高いナツメを見上げて、
「……ナツメって、……交際してる女性とかいるんですか?」
何故か敬語になった。
「いきなりだなお前は」
「いや、あの、マネージャーさんが話してるのを聞いてだね……」
「いねえよ、俺は皆のものだからな」
「……ほう」
「つっこめよ」
あ、ごめん。
素で謝って、なんだかホッとしてる自分に気付いて動揺する。
……うん? あれ、なんだろうあたし。
……緊張してる。のかもしれない。
ナツメが隣にいて、バカみたいなこと話して、笑って言い争うのはもはや日課のようなもので、当たり前で日常だったのに、あたし、緊張してる。
なんだ、これは。
「宮内は?」
「えっ!?」
「交際してる熊とかゴリラとか雪男とかいるんですか?」
「選択肢おかしいよねええええ? ヒト科の生き物がいないんですけどおおおお!?」
「いるだろ雪男」
「それ多分妖怪」
少なくとも人間じゃない。