……ちょっとだけ、覗いてみようかな。
バスケの話をするときだけは楽しそうに偉そうに積極的にあたしに話しかけてくる。
一度ちょっと見てみたいと思っていたし、この機会にほんの少しだけ見てやろうじゃないか。
どんなものか、お手並み拝見的な。一度でもシュート外したら、バカにしてやろう。
と、不純な思いで足を踏み入れた体育館は、バスケ部とバレー部が半分ずつ使っていて、ナツメの姿は右側のコートですぐに見つけられた。
おお、なんだかみなさん真剣だ。
そういえば、レンくんの弟もバスケ部で、あたしに積極的なアプローチしてくれたんだよね。
顔もレンくんそっくりでイケメンだし、あのときのあのイベントはあそこのセリフにちょっと揺れたかな……って、今はそんなことを考えてにやける場合じゃない。
軽く頭を振って、一度は見失ったナツメの姿を再び探せば、ちょうど彼のその長い指先からボールが放たれ、その球は綺麗な放物線を描いてネットに入っていった。
「うわお……」
思わず声が出て、吸いこまれるようにゴールを決めたボールは床に落ちて小さくバウンドし、あたしの足元まで転がってくる。