俺は続ける。
「ただ企業が不祥事を起こしたわけじゃないので、明日には元のレートに戻ると思います。とはいえ一時的に株価が急落したとなれば、会社側もその原因を追及するはず。そして原因が社長の息子が原因だとわかれば……」
「まあ、お灸をすえられるだろうな」
「帰宅によって親の会社に迷惑をかけてしまったとなれば、いくらタイムがよくても芸術点で大幅な減点になるはずです」
我ながらいい性格をしてると思う。お灸をすえられるべき相手は寧ろ俺だ。
一番性質の悪い妨害行動だもんな。メンタル面でのエゲツない攻撃だ。
「そうまでして勝ちたいのか?」
普段通りの口調で先輩が言葉を紡ぐ。
iPadを弄りながら少し悩んで、自分の想いを整理した。
「いや、勝ちたいとかじゃないですね。もしこれが大会じゃなかったら、たくさんの生徒が帰宅してる最中じゃないですか。そんな時にヘリが来たら大惨事にだってなりかねないし、だから……うーん……」
嗚呼、言いたいことが上手くまとまらない。文章の構成力のなさに泣ける。