「そっか・・・旦那がさ、兄貴達と一緒に店に来て、あの反物を選んでいったんだ。きっと娘に似合うぞって言ってな、兄貴。」
「そうだった。」
「あの時、旦那から、俺に何かあってもこの反物は、緑涼達に渡していく。娘が戻ってきたら浴衣作ってやってくれって。」
「で、今日、椿に見せようとしたら、火燐と蓮流が勝手に持っていって見せちゃったんだべ・・・あの時だけはもう呆れるしかなかったべや。」
「そりゃ、あの火燐さんだから(笑)」
「それに、蓮流も一緒になってするもんだから、もう余計に・・・」
彼らは笑いながら親父のことを話していた。
私が知らなかった親父の姿。
勝手に家を出て行って、何もしなかったかなりの親不孝者娘の事を思う親父の一面。
初めて知ったそのことに、改めて親父の気持ちを知ったような気がした。