「いこう」
僕の意識がハッと戻ってきた。
ヒンヤリと冷たい感触が、熱を持った僕の手を包んでる。
驚いて視線を手元に移す。
すると白い手と日焼けした手が、柔らかく繋がれていた。
ノノの小さな手の平が僕の手をかるく引っ張っている。
「え!!?」
「はやくいこう」
少し前を歩くノノが振り返らずに言う。
(そんなに早く行きたいのか?)
慌てながら考えてみるけど、よくわからない。
スタスタと田舎道をその茶色いサンダルで進んでくノノの顔は見えない。
でもさっきみたいに笑ってはいないだろう。
怒ってるようにも見えるけど、元が無表情だからやっぱりよくわからない。
繋がっている手の平から、彼女の冷たい体温が伝わってくる。
とゆうより僕の体温を奪われているようにも感じる。
僕は繋いでいないほうの手で、破裂しそうな心臓を抑えながら歩く。
ノノには聞こえないように、深く息継ぎをした。
ノノが戸惑ってる気持ちを誤魔化すように、その綺麗な顔を強ばらせてるなんて、僕は知りもしなかった。