「いや、ちがうちがうちがう。この手は気にすんな!」
ベラベラと早口で言葉を並べて、僕は顔を左右に勢いよく振る。
ノノは呆れてるのかどうなのか、よくわかんないけど、僕をまっすぐ見ている。
「……ごめん」
僕は思わず苦笑い。
「…ふふっ」
こぼれだしたような、柔らかくて可愛らしい、そんな笑い声が耳をくすぐる。
僕は、その声の主を見開いた目で見つめる。
ノノが笑っている。
控えめな笑顔は、ホントに可笑しそうで。
―――昨日の夜、夢を見た。
夢というより、僕の疑問がふらふらと。
真っ暗な空間を漂い泳いでいるような。
ひかりなんてないけれど、白いものがチラリと動いて。
なんだろう、目を凝らしてもそれが何かはハッキリしない。
そして泣き声が響くんだ。
悲しい音が落ちるんだ。
その音を追いかけるように、僕の声がぼんやりと漏れる。
『君はどこにいるんだろう』
“きみは”
“どこに”?