「棗くーん?」
考え事をしていた僕の耳に、マヌケな声が響いた。
驚きながら顔をあげて正面を向くと、父さんが不思議そうに首を傾げて僕をみていた。
「な、なんだよ」
「お話きいてなかったのお?」
ふざけた話し方をする父さんにイライラする。
でも、考え事に気を取られて父さんたちの話を聞いていなかったのは事実だから、何も言えない。
「………」
悔しいから無言で睨んでみたら、父さんは満足そうに笑っている。ムカつく。
「今日さ、ノノちゃんにこの町を案内してやってくれよ」
まだニヤニヤしている父さんが僕に頼む。
今日は予定も何もないから別にいいんだけど、
どちらかってゆうと全然いいんだけど、
てゆうか、僕からお願いしたいくらいなんだけど…。
なんて、頭が混乱して変なことを思った。