「……な…」



声が聞こえる。



「…な……つ」



頭上から落ちてくる、その声は、



「なつめ」



ひどく切ない。



ぼんやりと薄く目を開いたときだった。



バシッ



「え」



頬に衝撃を感じて、飛び起きる。



ジンジンと痛む頬を手の平でおさえてる僕を、無表情で見下ろす少女。




彼女を見上げながら、何度もまばたきをする。




「ノノ!?」


「父上様に起こしてきてと言われたから来た」



ノノは昨日の夕食の時から、父さんのことを父上様と呼ぶようになった。



もちろん、酔っぱらった父さんが、ふざけてお願いしたせいだけど。



忠実に守ってるノノに今朝、挨拶されて、酔いから醒めた父さんはどれだけ申し訳無く思ったんだろう。



そんな父さんの精神的事情なんてどうでもいい。



それよりも、




「なんで殴んだよー?」


情けなく泣き真似をする僕を、見下ろしたままノノは勝ち誇ったように、


「起きないのが悪い」



なんて言う。