「ノノ」
「はい」
「家に入ろう」
「…はい」
ノノが涙を拭う。
本当は僕が拭ってあげたかった、なんて思ったのは内緒だ。
ついさっき全力で走ってきた庭の道を、ノノと2人でゆっくり歩く。
ガラス戸の近くに着いて、たぶん家の中にいるであろう父さんに叫ぶ。
「とーさーん、濡らしたタオル持ってきてー!」
僕もノノも素足で庭を歩いたから、足の裏が真っ黒だった。
「はいよー、てかどーしたんだよ?」
マヌケな声と共に、父さんが廊下から居間に入ってきた。
その手には僕が頼んだものが握られている。
「あ、それが…」
父さんからタオルを受け取ってノノに渡す。
ノノはそれで自分の足の裏を吹いてから、僕と父さんにお礼を言った。
僕も同じように汚れを取ってから、居間に上がる。
そして父さんに向かって、中断していた説明の続きを話した。