上を見上げる。
そこにはあの部屋の窓と、水色のカーテンがチラリと見えた。
確かに、命が消えてしまう程の高さではないかもしれない。
(だけど、無傷って…)
僕はののを見つめながら考える。
答えなんてでないまま、疑問は残った。
「…のの、って」
そう呟いたのは彼女だった。
そ、っと僕の腕のあたりのシャツを掴みながら、呆然と。
「あたしの名前?」
かしこまった言葉づかいではなくなっていて、僕はなんとなく親近感が沸く。
「そうだよ。嫌か?」
いきおいでつけてしまった名前。
僕は、もうこれ以外に思いつかなくなっていた。
だけど彼女は嫌かもしれない。
人の名前なんてつけたことがない僕は、優柔不断な性格も手伝って、なんだか申し訳なかった。
しかし、そんな僕の問いかけに彼女は首を振る。
「嬉しい」
それは初めて彼女自身から聞いた、
ノノの感情だった。