「棗がつけて」 鈴のような声。 だけど静かで、淡白な声。 「え…」 「名前。棗がつけて」 『名前』を、 『僕』がつける? 今度は僕が動きを止めた。 そんな僕に彼女が急かすように歩み寄る。 それに合わせて、僕は後ずさる。 「つけて、ください」 「ままままま、待って!ちょ、」 両手の平を彼女に向けて止まらせようとする、けど。 彼女は止まらない。