「家族なんだから、ここにいればいいよ」 彼女は顔を上げた。 やっぱり無表情だった。 瞳の中には戸惑いの色。 だけど寂しくて冷たいひかりはゆれていない。 「………」 彼女は黙り込んでしまった。 僕は少し不安になる。 「…おーい?」 「棗さま」 下を向いている彼女の表情は見えないけれど、なんだか泣いているような声だった。 淡々としていて感情が分からない声だけど、なんとなくそう思った。