そこでわざわざ父さんが口を出してきた。



タバコに火をつけながら、当たり前のことを言うように。




「―――…っは?」




間抜けな僕の声が響く。



口からするりと漏れた紫煙が空中を泳いでいる。




「だからね、お客さんじゃないんだよ」




益々訳が分からなくなる。




少女は特に驚いた様子ではなく、ただじっと、僕を見ているようだった。




「家族ってなんだよ!?もしかして隠し子か!!?」




『隠し子』



ちゃらんぽらんな父さんだったら、有り得ない話ではない。



必死で説明を欲しがる僕に、父さんは笑いかける。



「それはないない。父さん、楓ちゃん一筋だもん」



『楓』とは父さんの愛妻。



つまり僕の母親。



母さんは今は仕事で遠くにいる。半年以上、この家には帰ってきていない。



母さんは優しい。



父さんとは正反対の、落ち着いてて柔らかい印象で。



正直に言うと僕は、母さんは父さんに呆れてこの家を出て行ったんじゃないかと思ったこともある。



どちらかというと父さんの方が母さんにベタ惚れだった。



けど母さんだって、滅茶苦茶な父さんが大好きだったみたいだし。



とりあえず出て行ってはいないだろう。




この場ではあまり関係のないことを、頭の中で整理していた。



そしてたぶん、この少女は隠し子ではないだろうと、父さんの言葉で納得する。