「客間ってさー、“お客さんの部屋”ってイメージが俺の中にあるんだよなあ」
「?俺の中にもあるけど」
「じゃあいいじゃないか」
そう言って父さんは両手を握って親指だけ立たせた、グーサインを全力で僕に披露した。
色黒・長身・アゴ髭の、見た目だけでは迫力があるこのオヤジは、
実の息子の僕が呆れるほど中身が残念だ。
仕事は何をしてるのか、僕もよくわからない。
友達の目撃情報によると、
商店街の酒屋で接客をしていたり
見たことないトラックの運転をしていたり
なぜか船に乗って漁をしていたりしたらしい。
訳がわからない。