そんな風に言われてなんだか私の心臓はものすごくドキドキしていた。

その場に立ち尽くすばかりの私は黙って首だけを縦にふった。


先生がものすごく優しく私の方を見る。

私はその視線に反応して全身がどうにかなるくらい緊張していた。


目の前には学校と外の境界線・・。

この校門をくぐるともう先生とはこの学校で会うことがなくなる・・。

偶然すれ違うことも、こっそり見つめることも・・できなくなるんだ・・。


そして私たちは静かにその境界線を越えた。

いつものこの道がまるで別のところに向かっていくように風景さえ違うものに見える・・。

確かに駅までの道も、電車から見える景色もいつもとまるで一緒なのに・・。

「先生・・」

私はそっと先生の手を握った。

「・・・」

先生は黙ってゆっくりと握りかえしてくれた。


電車を降りてからも握った手を離すことなく、ただ黙って歩いていた。

一歩一歩を歩きながら先生との思い出がふと頭をよぎる。

どれもこれも私と先生の大切な時間・・。

「・・・」

先生が自分の家を通りすぎる・・。

先生はいつも私と一緒の時は必ず家まで送ってくれていた。

・・・今日もいつもと一緒・・。


「先生・・」

「ん・・?」

私はつないでいた手をぎゅっと握りしめた。

「・・まだ・・帰りたくない・・」