「・・誰のせいでもないよ・・。お兄だってあすかと付き合う時点で覚悟してるはずだし、いずれこうなるってわかっていたと思う・・」

「・・・」

「彩さんのことだけど・・あすかが気にするのは当たり前だと思うんだけど、私から見れば彩さんとはまた別にあすかはお兄のこと幸せにしてくれたよ・・?」

私が・・先生のことを?

「彩さんを亡くしてからのお兄は見てらんないくらいで大学の時はものすごい自暴自棄で寄るもの拒まず、去る者追わず、みたいな感じで連れてる女はいつも違う人で・・顔なんか喜怒哀楽がないくらいいつも同じだった・・」

私が知っている先生は、とてもしっかりしていて今沙都が話していた感じとは全然違う・・。

「でもね、あすかが変えてくれたんだよ?」

「私が!?」

驚きのあまり声が裏返ってしまった。

「えっ、だって私何にもしてないよ!?むしろウザがられてたし・・」

・・思い出すなぁ・・。

追いかけて追いかけて、相手にされなくても毎日が楽しくて・・いつか恋人にと、夢を思い描いていた・・。

「この学校であすかに出会って・・口ではあんなに言ってたのにお兄の表情は昔と比べ物にならないくらいコロコロと変わっていった。怒ったり、面倒くさがったり、照れたり、笑ったり・・。私ね、毎日あすかに感謝してたよ・・」

「な・・何言ってるの・・私の方こそ・・幸せだったよ!」

「・・うん・・うん、そうだよ・・だから二人とも幸せだったんだよ・・。あすかが彩さんを思って不安になることなんてなにもないよ・・」

沙都は私の心の奥にある気持ちをわかってくれていた。

決して好きとはいってくれない先生の気持ちを疑って・・そのあとに見た一枚の写真に縛られていた・・。

不安な気持ちがさらに不安になっていった・・。

あのときのドロドロした気持ちを沙都は解放してくれた。

「沙都・・・」

私は下を向きながらさっき先生にもらった小さな箱の包みを触っていた。

綺麗に包装されていたのに私が触りすぎて少しシワシワになりかけていた。


「ん?なに?あすか・・その箱?」