「二階のかい堂ゆくと中、学ぶこともおおかれど。
 陸にうちあげられた、うつくしひ貝をひらうごとく、高みをみるならば。
 南にゆかん、さすれば春にであひ、枝にはなありけり。
この文章から、ひらがなを全部取ったらなにが出ると思う? ああ、そう! 丸があるところで区切ってね」

「えっと……」

3人は一斉に考え始めると、一番初めに口をとがらせるようにして、あかねが答えると、由希、秋葉と続く。

「二階堂中学」

「陸貝高」

「南春枝」

言って3人は、はっとするように互いの顔を見合わせた。

「二階堂中学は学校名。たぶん陸貝高は高校名。南春枝は――」

『人物名!?』

要のセリフを取るようにして3人は一斉に吠えた。
3人の興奮を冷静にいなすように、要は続ける。

「だと思うよ。それでね……二階堂中学に通っていた生徒がさ、うちの学校に一人だけいるんだよねぇ……」

その言葉に3人は驚いて息をのんだが、質問したのは秋葉だけだった。

「え!?誰だ!?」

要は3人を手招いた。
輪になってひそひそと、ある人物の名を耳打ちした。
その名に、あかねは目を見開いて呟いた。

「――え?」

あかねのこの小さな呟きは、廃れたビルにこだましたように感じられ、要は哀しげに小さく笑った。