「ねえ、秋葉さん聞いた? LOVEモノがお好きらしいわよ、あかねさん!」

「ええ、聞きましたとも要さん。由希ならともかくねぇ~」

「そうですよねぇ、秋葉さん!」

「昔っからLOVEモノがお好きだったんですのよ、あかねさんは!」

「ええ、知ってましたとも!」

「まったく、今の若いもんは――」

秋葉と要は「近所の奥さんの噂をしているオバサンのマネ」をしてあかねをからかった。
しかし当の本人は、「ハイハイ、またやってるよ」と受け流していた。

「いや~ん!秋葉さん、あかねさんが話しに乗ってくれませんわ!」

要は冗談めいてナヨナヨとし、秋葉の手をとった。その手を秋葉は握りキリッとした表情でこれまた、冗談めいて言う。

「そうですね、要さん!何て冷たいんだあかね!」

そんなバカなマネをしている2人に背を向け、呆れ顔のあかねは由希の手を引っ張り、早足で歩いた。

秋葉と要は慌てて2人を追いかけたが、あかねは早足を止めなかった。

「他人のフリしないでよ、あかねちゃ~ん!やってるウチらが恥ずかしいじゃん!」

要が走りながら言うと、あかねは吐き捨てるように答えた。

「するわ! コッチのが恥ずかしいっての!」

「何だよ、ただの悪ふざけだろ? 短気だな。」

秋葉のその呟く一言を聞いて、あかねの足が止まった。
勢い良く秋葉に向って、人差し指を向けながら怒鳴ろうとした。

「あんたねぇ――!!」

その時――!


「 きゃあぁあァあ~!!! 」


耳をつんざくような叫び声が聞こえて、4人はとっさに辺りを見回した。

どうやら夢中で歩いてきたせいか、来た事のない道に入っていたらしく、道路を挟んだ向こう側の公園や、要達の後ろにあるビル街を、4人は訳が分からずに、キョロキョロと見るばかりだった。

その時  べゴンッ!

けたたましい、低い音があかねの横に止めてあったトラックから響いた。

4人は反射的にそのトラックを見ると、荷物の上に掛けてある緑の布に窪みが出来ているのに気がついた。良く見ると、トラックの下が少しだけへこんでいる。

4人の頭に良くないことが過ぎった。

(もしかして、何か落ちたんじゃ……?)

4人はゆっくりと顔を合わせると、静かに頷いた。
そろり、そろりと静かに4人はトラックの上に乗ると、その窪みを覗いた。

次の瞬間、4人は絶句した……。本当に言葉が出なかった。

「おい、お前ら俺のトラックの上で何してんだ?」

後ろからこのトラックの運転手であろう男が声をかけて来たが、誰一人として振り向く者はいなかった。窪みの中のモノから目が離せなかったのだ。

要の唇がかすかに動く、そして声を振り絞るように、ポツリと一言、口をついた。

「……呉野先輩……」