翌日――

気持ちが良く晴れた午後、ヒステリックな声が小鳥を騒がせた。

「絶対あやしい!絶対あやしい!もう!何で今日土曜日なの!?」

「休みなのにウルサイ子だねぇ」

あかねのヒステリックな雄叫びを横に、要は軽くため息をついた。
すると、その横にいた秋葉がそれに便乗した。

「ほんとにな」

その横で由希が苦笑いを浮かべている。

今日は学校が休みだ。前々からこの日は映画に行こうと約束をしていた。
なのにあかねったら、昨日から「あやしい、あやしい」と同じ事を繰り返し言っている。

「だって、あの呉野先輩のあの態度!気になるじゃない!絶対何か知ってるわよ!」

「だからって、今トヤカク言ったってしょうがねえだろ?」

「確かにそうだけど……。だけど気になる!秋葉達は気にならないの?」

「なるけど、今言ったばっかりだろ、本人いないんじゃどうしようもねえって」
「ねえ、あかねちゃん。今は……映画に行く最中なんだから、その映画を楽しもうよ」

「そうそう、由希の言うとおりさね!あかね、アンタ先走りすぎ!休める時に休んでおかないと山は登れないでしょ?アンタの得意な勉強だって、休んでやんなきゃ効率悪いでしょ?」

「……分かったわよ。……今は考えないようにするわ」

不機嫌なあかねを尻目に、要は由希に耳打ちした。

「今日は「由希」の方なんだ?」

「美奈の体調が戻らなかったんだ。――この映画楽しみにしてたんだけどね」

「そっか」

由希の残念そうな表情に、要も残念そうに呟いた。そんな二人の前方から声がかかる。

「おーい! なに二人でこそこそ話してんだ?」

「おいてっちゃうわよ!」

秋葉とあかねに急かされて、二人は駆けていく。


       
「……なあ、面白かったか? あの映画」

映画館を出てすぐに秋葉のぼやきが聞こえた。
空はすでに赤かった。

「何言ってんの! 面白かったじゃない!」

秋葉のぼやきにあかねはそう意気揚々と答えた。

「そぉかなぁ? あたしはつまんなかった!」

頭の後ろに腕を組み、そう言うと要は大きなアクビをした。
眠たそうに目をこすると、隣にいた由希が遠慮がちに

「私は、楽しかった、よ」と意見を述べた。
 
しかしこの意見は美奈ならそう言うだろうというものだったので、由希本心としては「イマイチ」だった。

4人が見た映画はコテコテの恋愛映画で、要も秋葉も恋愛映画にはさほど興味はなく、由希は興味がなかったり嫌いだったりするわけではないが、話の最初っから「恋愛」ではなく、話の流れ上盛り込まれる恋愛の方が好きだった。
おそらく「恋愛、恋愛」してる映画が好きなのは4人の中ではあかねと美奈だけだったと思う。

「そうよ!楽しかったわよねえ、由希~!」

要を挟んで、あかねが由希に微笑みと同時に同意を求めると、由希はその同意に弱々しく答えた。

「う、うん」

すると、秋葉と要は同時に顔壊し、いぶかしげな表情を作ると一斉に叫んだ。

『ええ~!! あんなコテコテLOVE STORYがぁ~!?』