「恋愛って、すごく二人の感情が盛り上がって、それは燃える火の如く熱く、素敵なものじゃない?
でも、それも些細なことで一瞬にしてなくなってしまうのよ。
そういう一時的なものでしかあり得ないのよ。
付き合って倦怠期だなんだって言ってるカップルは、それは恋愛ってよりかは、考え方は結婚よね。
長続きさせたがってるんだから。
そのうち心のメーターがどんどん反応しなくなっていく。
二人の愛情が日常化していく。
当たり前になる。
それに重きを置くのが結婚で、恋愛は全く違う。
学生のうちから結婚なんて考えて付き合うのかしら。
違うじゃないの。
お互い惚れて付き合ってるんだから、終わりが来たって、どうってことないのよ、本当は。
そりゃあ、もちろん傷つくわ。
好きな人と気持ちが通じないのはすごく悲しいけど、受け入れるしかないのよ。
いつか必ず終わってしまうの、恋愛はね、本当に火と一緒なのよ」
ママがとぎれとぎれにそう話すのを、私は聞き入ってしまった。
「それに、恋人は変わっていくでしょう?
別れたり付き合ったり、合理的理性ではどうにもならない感情っていうものがあるのよ。
人間って複雑よね。
でも恋愛が人生の中における割合をかなり占めるのも事実よ。
時間じゃなくて、自分の中での印象のね」
そこからママはタイタニックの話を聞かせてくれた。
「タイタニックの映画は見たことあるかしら。
あれではね、女と男が出会ってその夜くらいに結ばれて、彼らにとって最高の時間を過ごすのよ。
恋愛にも、盛り上がる感じがグラフのようにこうなるでしょ。
二人の場合は、この頂点で船が沈没するって感じかしら」
ママは指で斜めに上がる線を空に描いた。