喫茶店に着いて、私はさっそく話しはじめた。
「さっきの、人違いじゃないですかって、英語で言ったんです。久しぶりに会ったときにやろうって、前に話してたんです」
「じゃあ大成功ってわけね。ぽかんとして、最後には上の人に怒られて追い掛けても来なかったじゃないの」
ママもクスクスと笑って、私やりきった達成感に満たされていた。
やっぱり楽しいや、京は。
私はお店の雰囲気をキョロキョロと見渡しながらメニューを開いた。
「何にしようかしらね」
「あ、私この日替わりティーセットにしようかなぁ。ケーキも着いてくるそうですよ」
「それいいわね、2つ頼もうかしら」
私はウェイターを呼んで、注文を済まし、またママと目が合って笑ってしまった。
「もし、またあの病院で会って声かけられたら、絶対やろうって思ってたんです」
「仲がいいのね。でも、ヒナだって分かっちゃうんじゃないの」
「それでいいんです。下手に連絡取りたくないですし…」
「あら、どうして」
「……あの人、元カレです」
ママは目を丸くして笑った。
「じゃあなおさら、さっきのはダメだったでしょう」
「いいんです!嫌いになれないから、別れても…今なんかあるの、その方が困ります」
そこでお茶とケーキが運ばれてきて、一旦会話が止まった。
「へぇ~元カレね」
ママは一口飲んで、また話しだした。
「ヒナも恋するんだなって。嫌いじゃないって、なぜ別れたのよ」
「あれが最初で今に至ります。受験の邪魔でしょうから、他に好きな人ができたって言って別れたんです。医大に行きたいとは聞いてましたけど、ちゃんと受かったみたいですね」
「よくあるわよね、学生の恋愛は」
「そうですか」
「みんなそんなもんなのよ」
ママは遠くを見ながら言った。