茂樹さんとママと3人で話したあと、



茂樹さんが14時から検査があるということで



私たちは帰ることになった。



「元気そうでよかったですね」



「そうね。あの検査でだいぶ決まるそうだから」



「またお店に来てくれるといいですね」



「そうね。あ、ヒナ、ちょっと用を足してくるから、ロビーで待っててくれるかしら」



「あ、はい」



私はママの荷物を持って、一人ロビーに向かった。



午後になったせいか、人が前より増えていて、私は端の方の椅子に座ることにした。



いそいそと歩く看護師さん、



べそをかいている子供、



新聞を読んでいるおじさん、



私の住む町に、こんなにたくさんの人がいることを私は実感させられた。



「お待たせ、ヒナ」



ママと合流して、また駅に向かうことにした。



駅前にできた新しい喫茶店に連れていってもらう約束をしていたのだ。



最近の休みといえば、菜々子さんの家で借りてきたDVDを見るくらいだったから。



それも、私は十分楽しいんだけど。



きっと、南さんとの一件で、ママは私のことを心配しているんだと思う。



病院を出るところで、後ろから駆け寄ってくる足音が聞こえた。



「あの、すみません」



私の肩が叩かれて、振り返ると京が息を切らして立っていた。



「日向…」



私はついに長年ためておいた二人だけの遊びを実行することにした。



「sorry, i cannot speak japanese...you maybe take me for someone!」



私はいたずらに笑って、きょとんとする京を置いてママと歩いて行った。



一番驚いているのはママだった。



「ヒナ、何したのよ」



ママは半分笑いながら顔をしかめていた。



「あぁ、あれはですね」



私は振り返って京を見たら、先輩らしき人に怒られている様子が見えた。



学校で廊下を走ったら怒られるのと一緒のようなもんだろう。