「菜々子さんですね。…ああいう女性がタイプですか」



チラッと鷹さんの顔を覗くとほんのり顔が赤くなっていた。



「顔が赤いですよ」



「ちがっ…これはアレですぜィ…酒のせいでさァ」



「私と菜々子さん代わりましょうか」



「オイオイ…そんなこと言わないでくだせェ」



否定しながらもずっと目で菜々子さんを追い掛ける鷹さんが可愛らしく見えた。



「俺はヒナに会いに来たんだけどねィ」



そう言ってぐいっと私の顔を覗き込む。



「本当に」



「約束しただろィ」



鷹さんの目に私が映っているのが見えた。



私はクスッと笑って、鷹さんと向き合った。



「そう言ってもらえて嬉しいです」


笑ってる私とは反対に、鷹さんはため息をついた。



「はぁ…そうかィ」



「なんですか」



怪訝な顔で腕組みをする鷹さんを見て、私は頭を傾げた。



「ヒナはオレ以外の奴にもそうやって笑うんだな、って思ったらねィ」



「イヤですか」



「海の男はそんな小せぇこと言わねぇでさァ」



「さすが鷹さんです」



私が鷹さんの肩に頭を寄せて笑っていると、



店内のどこかでグラスが割れる音がした。



ビックリして座りなおしたけど、どうやら私のテーブルではないみたいで。



「…大変失礼しましたっ」



と私は鷹さんに頭を下げた。



「いい感じだったのにねィ」



鷹さんは肩をすくめて笑った。