向こうからは、フッとこちらを見透かしたような笑いが聞こえる。 殺気も感じられ、それぞれ刀に手をかける。 まだ、雲はどかず姿は見えない。 ただわかるのは、敵ということだけ。 「俺を忘れたか。」 そう、男の凛とした声が屯所に響く。 その声と同時に、厚く覆われていた雲は動き、少しずつ光がさす。 そこには、男がただ一人いた。 そう。 あの男が…………。 息を飲む音が聞こえる。