「いや・・・
琴美に何もなくてよかった。
後は、オレに任せて」
「・・・うん」
携帯を切った私は、
その場に座り込んだ。
・・・
今から何が始まろうとしているのか、
・・・
私もゲームの対象者だと言ってた。
・・・
そのことだけは、
秀に言えなかった。
余計な心配はかけたくなかったから。
それから数時間後。
警察に一本の電話が入った。
『今から都内のコンビニのどこかに、
強盗が入る』
名前も告げずにそれは切れた。
都内のコンビニは、
何千件もある。
しらみつぶしに探すのも、
時間がかかりすぎた。
警察は、動ける者をすべて捜査に出した。
・・・
そのことが、
秀の耳にも入った。
オレも一度、
警察署に行くことにした。
・・・
準備ができて
行こうとした時、
また携帯が鳴りだした。
「もしもし」
「琴美から聞いてると思うんだけど、
オレ、ミキヤです」
「…何でオレの携帯」
「あなたのことなら何でも知ってる」
「何の用だ、今から出ないといけないんだ。」
「コンビニ強盗でしょ?」
「?!」
警察しか知らないことなのに、
なぜコイツが知ってる?
「驚いたでしょ?」
「お前、何者だ?」
「この事件の首謀者ですよ」
「なっ?!」
「コンビニ強盗はオトリデスヨ。
今から都内の○○銀行を襲います。
さて、秀は間に合うかな?」
そのまま電話が切れた。
「クソッ」
今頃もう警察は出払っているはずだ。
携帯で琴美の父に電話をしながら、
○○銀行に急いだ。
・・・
時すでに遅し・・・
移動予定の輸送車が襲われた。
金額は5000万。
ミキヤ、
お前はいったい何者なんだ。
・・・
琴美のことも知っていた。
琴美には絶対近づくなよ?
胸騒ぎがなかなか収まらなかった。
朝方、なんとなく目が覚めた。
?!
突然鳴りだした携帯。
こんな時間に誰から?
送信元は、知らないアドレス。
琴美
ーーーーーーーーーーーー
ゲームが始まったよ。
もうすぐ琴美のところに行く
ーーーーーーーーーーーー
ミキヤ
ゾクッとした。
・・・
秀に何かあったんじゃないか。
不安な気持ちを抑えつつ、
秀の携帯を鳴らした。
「もしもし」
秀の声だ。
私は安堵のため息をついた。
「秀、よかった…
ゴメンね、こんな時間に」
「いいよ。なんかあった?」
「秀、何か事件が起こらなかった?」
私の質問に、明らかに動揺していた。
・・・
秀が、こんな態度をとるなんて、
初めてのことだった。
「なんで?」
「ミキヤから、メールがきたの」
「・・・それで?」
「ゲームが始まったって」
「そうか・・・
他には?」
・・・私のところに行くとは、
言えないよ。
「う、ううん。それだけ」
「本当に?」
「もちろん。秀にウソつくわけないでしょ?」
「そうだな」
秀が、クスッと笑った。
…ゴメンね、秀には、迷惑かけたくないよ。
仕事だって大変なのに。
「琴美は何も心配するな。
警察が、きっと捕まえるから」
「・・・うん。
無理しないでね。・・・
なんかあったら、真っ先に逃げてね?」
「どうしたんだよ急に?」
「なんだか怖いの。
秀に何かありそうで」
「バカ、心配するな。
琴美こそ気をつけろよ。
ミキヤに会っても近づくな」
「うん、気を付けるよ」
携帯を切った私は、
もう一度ミキヤからのメールを見た。
・・・
私に、秀の役に立つことはできないかな?
コイツを捕まえれば、
事件は終わるはず・・・
私はそんなことを考えていた。