ここまでしといて逃げるとか、なくね?」



もう少しのところで腕を掴まれて、叶わない。

あたふたとしてるうちに、背中に感じる湯上りの暖かい体温。見る見るうちに私の服が濡れていく。全身の血が逆流したように熱くなる。やばい、なんだこれ。



「あの、服、濡れちゃうんだけど」

「あ? どうせ今から脱ぐんだから関係ねぇだろ」

「は、なに言って」

「わざわざ夜中に男の部屋に上がり込むたぁ、お前も期待してたんだろ? ん?」



いつになく甘ったるい声で囁きながら、湿った手が私の太ももを撫で上げる。思わずピクリと身体を振るわせれば、背後でクッと笑いを押し殺す声がして。



「お望み通り、迫ってあげようか」



濡れた髪が当たったせいで冷えた私の耳朶を、熱く濡れた唇が食む。