慧の死を理解したその日の夜、私は世界が終わったことを確かに感じた。もちろん、地球は回り続けているだろうし私は息をしている。
だけど慧の世界は眠りについた。そして同時に私の世界も。

慧の世界の住人はきっと僅かしか居ない。その僅かな住人だって、いずれ他の世界へ渡っていってしまう。
恐らく最後の最後までそこに居座り続ける私は、寂しさに潰されて死ぬのだろう。

「…もしもし。今から会えない?」
そうなってしまわないように、私は時間が空けば携帯のメモリーにある友達の番号に片っ端から電話をかけるようになった。
寂しさを埋めるように、せめて私の世界に誰かを招き入れたくて。
世界を終らせたままでいたくなかった。