彼氏が死んだばかりなのに、もう他の男を作ってる。
私と直之が一緒に居ると、いつも軽蔑の眼差しを向けられた。それは辛かったけど、離れたくもなかった。離れる必要だってなかった。

何故って、私と直之は付き合ってなんて居なかったから。そもそも、付き合うだなんていうことは有り得ないと思っていた。
好きだし愛していたけれど、だからって付き合う理由にはならない。


酷い女だとか、そんなふうに思ったあなたに尋ねたい。
家族を愛しているからといって、付き合いたいと思うだろうか?私の直之に対する「愛してる」は、それと同じなのだ。
直之には、自分の欲望だとか欲求だとかをぶつけたいとは思わなかった。ただ、温もりとしてそこに居てくれれば良かった。お互いそれだけで充分だったから。
それが私たち二人の在るべき姿だった。

きっと皆、そんな気持ちを理解できる日が来るはずだと私は思う。だけどその時がくるまでは、誰も解ってくれない。

だけどきっと、慧なら解っている。これは、慧が与えてくれた運命なのだから。