彼女の学校は学年ごとに体操着の色が決められていた。三年生は赤、二年生は青、美鈴達一年生は紫色だった。だから体操着の色で学年を知ることが出来た。
美鈴はこの体操着が嫌いだった。野暮ったいのだ。もっと垢抜けた今風の物に出来ないのだろうか?体操着を着る度にそう思っていた。
そんな時、美鈴は背後から肩を叩かれた。
振り向くと佐伯佐枝が笑っていた。佐枝は美鈴にとって小学校からの友達だった。
小学校三年の時、転校して間もない美鈴に最初に声を声をかけてくれたのが佐枝だった。二人はそれ以来の付き合いだった。
佐枝は最新型の携帯電話を弄っていた。暇つぶしにゲームをしていたようだった。美鈴は彼女を羨ましく思っていた。美鈴も携帯電話は持っていたが未だに子供用のキッズ携帯だった。その理由を一度母親に訊ねてみたが、『今に判るわ』とだけ言って話してはくれなかった。
「先生、遅いね」
佐枝は相変わらず携帯を弄っている。
「そうだね」
美鈴は相槌を打ち、教壇の方を見た。その時、美鈴は自分の目を疑った。ぼんやりとした赤黒い影のようなものが視界の片隅に映ったからだ。美鈴はゆっくりとその影の方に目をやった。それは相変わらずぼんやりとしていたがある席の傍らに立っていた。その席は三上響子の席だった。影は響子の席を見下ろして不気味に微笑んだように美鈴には感じられた。響子の姿はまだ見ていない。美鈴は根拠のない不安を感じた。
「どうしたの、ぼんやりして」
佐枝が再び声をかける。
「ううん、何でもない」
美鈴は応えた。
その時、ガラガラと音を立てて教室の前の扉が開いて、担任の野本が姿を現し、黒板に大きく『自習』と書き込んだ。溜息と歓声が入り混ざった声が教室を埋めていった。
「静かにしろ」
野本は手を叩いてその喧騒を消そうと試みたが、それは徒労に終わった。野本は腰に手をあてて諦めたような表情を見せた。
「それから、伊本、野川、飯田、先生と来てくれ」
野本は三人を連れて教室を出て行った。
美鈴はこの体操着が嫌いだった。野暮ったいのだ。もっと垢抜けた今風の物に出来ないのだろうか?体操着を着る度にそう思っていた。
そんな時、美鈴は背後から肩を叩かれた。
振り向くと佐伯佐枝が笑っていた。佐枝は美鈴にとって小学校からの友達だった。
小学校三年の時、転校して間もない美鈴に最初に声を声をかけてくれたのが佐枝だった。二人はそれ以来の付き合いだった。
佐枝は最新型の携帯電話を弄っていた。暇つぶしにゲームをしていたようだった。美鈴は彼女を羨ましく思っていた。美鈴も携帯電話は持っていたが未だに子供用のキッズ携帯だった。その理由を一度母親に訊ねてみたが、『今に判るわ』とだけ言って話してはくれなかった。
「先生、遅いね」
佐枝は相変わらず携帯を弄っている。
「そうだね」
美鈴は相槌を打ち、教壇の方を見た。その時、美鈴は自分の目を疑った。ぼんやりとした赤黒い影のようなものが視界の片隅に映ったからだ。美鈴はゆっくりとその影の方に目をやった。それは相変わらずぼんやりとしていたがある席の傍らに立っていた。その席は三上響子の席だった。影は響子の席を見下ろして不気味に微笑んだように美鈴には感じられた。響子の姿はまだ見ていない。美鈴は根拠のない不安を感じた。
「どうしたの、ぼんやりして」
佐枝が再び声をかける。
「ううん、何でもない」
美鈴は応えた。
その時、ガラガラと音を立てて教室の前の扉が開いて、担任の野本が姿を現し、黒板に大きく『自習』と書き込んだ。溜息と歓声が入り混ざった声が教室を埋めていった。
「静かにしろ」
野本は手を叩いてその喧騒を消そうと試みたが、それは徒労に終わった。野本は腰に手をあてて諦めたような表情を見せた。
「それから、伊本、野川、飯田、先生と来てくれ」
野本は三人を連れて教室を出て行った。