その様子に小島と恵は違和感を感じた。根拠は何もなかった。刑事の勧とでも言おうか、彼らが何かを隠しているような感じがしたのだ。この勘は小島の方が強かった。これだけを出発点にして事件を解決したこともある。けれども二人が同時に同じ感触を持つことは滅多にないことだった。
(彼らは何かを隠そうとしている)
 二人が感じているのは、そのようなものだった。
 その時、一時限目が終わったことを告げるチャイムが聞こえてきた。校内の喧騒が大きくなった。しかし、それとは逆に校長室内の沈黙は変わらなかった。
 その沈黙を破るように
「彼女の友達の話を訊けませんか?」
 恵が言った。
 二時限目が始まるチャイムが鳴った。
「判りました」
 と言って野本は出て行った。
 
 教室内は騒がしかった。
 一限目が自習であり、二時限目の教師もまだ来ていないからだ。教科書を机の上に置き次の授業が始まるのを待っている者、席を立ち騒いでいる者、近くの生徒と話している者、様々な音が混ざり合い、一つの生き物のように渦巻いていた。
 そんな中で美鈴はぼんやりと窓の外を見つめていた。彼女の教室は二階だったので、校庭の半分くらいが見渡せた。そこには体育の授業が始まるのを待っている三年生の姿があった。