野本が三人を連れて校長室に戻ってきたのは、出て行って五分くらい経った頃だった。野本が連れてきたのは、伊本彩花、野川明美、飯田美佳といった。彼女たちは、自分が何故連れてこられたのか疑問に思い、自分達が学校に隠していることがバレてしまったのか不安に思い、顔を下に向けていた。
 小島は彼女達に事実を直接ぶつけてみることにした。
「三上響子さんって、君達の友達だよね?」
 三人は黙って頷いた。
「彼女、殺されたよ」
 途端に三人の表情が変わり、互いの顔を見つめ合った。恵の眉が少し上がった。何もいきなり本題に触れなくても、そう言っているように小島には見えた。けれども、小島はそれを無視した。
「彼女、昨夜は何をしていたか知っている人はいないかな?」
 恵が意識して優しい声で言った。
 三人はまだ顔を伏せたままだった。
 しかし、いつまでも言わないことも出来ないと思ったのか、明美が重い口を開き始めた。「昨夜は四人で駅前のカラオケに行ったよ」「そのカラオケ店って、何処?」
 恵の質問に彩花が店名を応えた。小島と恵はその店名をメモした。
「何時頃まで居たんだい?」
 今度は小島が尋ねた。
「八時くらいかな?」
 美佳が答える。
 そのやりとりの間、小島は三人の様子を伺っていた。三人はどこかおどおどしているように彼には見えた。この子達は何かを隠している、小島の鋭い目がそう告げていた。けれども三人の少女達はそれに気づいてはいなかった。相変わらず彼女達は俯いている。
 小島は鑑識の岸田健二の言った死亡推定時間を思い出していた。詳しく調べてみないと判らないが、昨夜の八時から十時の間だと言っていた。美佳の言っていたことは辻褄が合う。
「その後響子さんはどうしたか知っている?」
 今度は恵が彼女達に訊ねた。
「さぁ、家に帰ったんじゃない?店を出てから私達バラバラになったから」
 明美が答えた。