そんなことを考えながら走っていた優奈だが、
いつしか大智のところに行く気もうせて、
足が勝手に別のほうへ走り出す。

「優奈ーーー!!!!!」

呼んでるね。
私の名前を。
だんだん遠くなっていくその声は、
私の心の中で繰り返し聞こえる。

「優奈ぁーーーーー!!!!!!」

さらに大きくなって聞こえたとき、
大智はすぐ後ろにいると気づき、
立ち止まった。

大智、ごめん。
本当に私のことを好きだったら、
ごめんなさい。
優奈は、あなたを傷つけるために走っていました。
ずっと言えずに心にあった言葉です。
...。
お別れがしたいんだ。

すべてをやり直したい。

恋をすること。
愛して、愛されること。

今、大智と別れることで、すべてをやり直したい。

ごめん、

ごめん、

ごめんね...。

ゆっくりと息を吸って、
涙を浮かべて言い放った。



「大智...私と一緒で幸せだった??」

風で髪の毛が顔にかかって、目が合わない。

一番聞きたくて、聞けなかったこと。
風が、吹いている。
暖かい春が、冷たくなっていく。
その瞬間、大智は私を

ぎゅ.....っ。

抱きしめたんだ。