頭の隅で、「見える」とか言われたら…、
とか考えたけど、その心配はなかった。



金を払って、写真たてとブローチの入った布の袋を持つ。


「じゃあ、ありがとな源さん」
「おぅ、紘やノエルによろしく言っといてくれ」
「あぁ、わかった」


軽く返して店のドアを開く。


手を離せば自然とドアが閉まる。


閉まっても聞こえてくるドアについた鐘の音。


当たり前のように繁華街を歩き始める。



「ヒナーっ!これヒナに似合いそーっ」
「ぎゃー!めっちゃ可愛いっ」



スタスタと歩く俺の耳に入った懐かしい声。


でも、その声の持ち主がここにいるはずがない。


「輝」



後ろから低く静かな声が響いた。


さっと振り返れば、見慣れた人たちがいた。


「お疲れさまです。紘さん、ノエルさん」

「お前もな」


独特の、男の俺まで感じる色気。
威圧感を放っている。



俺の尊敬する2人であり、大切な人たち。



「今から行くのか?」
「はい」
「じゃあ一緒に行くか?」
「はい」


2人の横に並んで歩き出す。


自分の中から、ソラの存在が消えることは決してないだろう。

そんなのは無理だから。
それはよく分かってる。



でも、俺の今の居場所はーーー。


俺が守るべきものはーーーー。