K大、外国語学部
外国語学科英語専攻。
三年の仁科春(ニシナハル)。
隣町に一人暮し。
これが、私がもう一度会いたくてたまらなかった人の素性だった。
隣町と言えば校区さえ違えど、徒歩二十分ほどで行ける距離。
案外近くに住んでいたんだなーって。
それにK大の外国語学部と言えば、この辺りではレベルが高いことで有名。
「理系科目が苦手なので、そちらを重点的に教えていただきたいのですが」
「ええ、大丈夫です。どの教科でも。紗夜香さんの状態を把握しながら、勉強を進めていきたいと思います」
それにしても、彼に間違いないよね?
遊園地で会った時とは印象が少し違うんだけど。
うーん。
髪の色が真っ黒だから?
眼鏡をかけてるから?
スーツなんか着てるから?
全体的な雰囲気が大人っぽくて知的で、いかにも親受けしそうな感じ。
とても人をひっぱり回して「あんた」なんて呼んで、皮肉を言ったりするようには見えない。
お母さんと話を進めるハル君をマジマジと見つめる。
本当にあの日のハル君と同一人物なのかな?
礼儀正しくて物腰の柔らかな話し方に、少し不安を覚えてくる。
……ハル君、だよね?