とても礼儀正しくて、透き通るような声は胸にスーッと簡単に入ってきて。
だけど何だか聞き覚えのあるような声で。
ダメダメ。
期待したら。
だけど、この声は。
壊れそうなほど胸を叩く鼓動に体を小刻みに揺らしながら、視線をゆっくりと上げていく。
顎、口、鼻、目、眉毛、頭……。
「ハッ……!!」
一瞬にして頭の中がパニックになった。
目の前に彼がいるから。
あの日の彼が。
信じられない偶然の再会に開いた口が塞がらず。
だけど、彼は“初めまして”って言ったし、覚えていない?
万が一覚えていたとして、お母さんに彼との出会いを何て言えばいい?
本当のことは何か言いづらいし。
「紗夜香どうしたの? “は”って?」
えっと、えーっと。
「ハッ……」
「?」
えっと、えっと、えーっと。
「ハ……ハッヒフッヘホー。
……なんちゃって」
もちろん辺りが一瞬にして凍ったのは言うまでもなく。
咄嗟に思いついたのが優美の言葉だなんて。
優美のバカー!!