もうすぐしたらみんなもここに来るはず。

鉢合わせとか勘弁だし。

このまま外に連れ出しそうな勢いの男に、ついていくのもアリなのかもしれない。

どうせ今日はいいことなんてないんだし……。


肩を抱かれたままそんな風にボンヤリと一人で考えこんでいたら、



「ワタル、お前何してんの?」



後ろから少し低くて透き通るような声が聞こえてきて、隣の男がビクッと肩を震わせた。

それにつられるように私の体は強ばる。


隣の男がゆっくりと後ろを振り向くと、



「あっ、ハル!! いや、これは何でもないし!」



まとわりつくように触れていた手がパッと離れ、早口で何だか慌てたような声が聞こえてきた。

そして少しずつ後退していく。

と思ったら一目散に走り去っていった。


一体何なの?

いまいち状況が掴めない。


ポツンと一人取り残されて。

ううん、あの男から助かった?

突然現れた、まさに白馬の王子?

それとも騎士?


ってさっき“ワタル”って呼んでたし、二人は知り合い?


……とりあえず助けてもらったんだ。


何だかんだ言いつつも軽くなった肩に安堵を覚え、私はゆっくりと目の前の彼に視線を向けた。