それは反射的に起こした行動だった。

この窓側の席からは、ハル君と出会った遊園地が見える。

思い出すのはあの時の絶望感、そして、ハル君と過ごした時間。



「今日も家に帰ってから勉強?」



振り向いてコクンと頷く。

親の出した条件はもちろんのこと、私自身がこれ以上親の期待を裏切りたくなかった。

それに上位でいないとプライドが許さない気がする。

二度と同じ気持ちを味わいたくないから。



「三つ目の条件としてね、塾に行くこと、そして月謝の一部をバイト代から負担すること。そこまでできないならバイトはさせないって言われて」

「うわーっ。紗夜香の親って厳しいね」

「うん、お父さんは特にね。学生の本分は勉強って言う人だから。けど、塾は嫌って断ったんだ」

「あれ? でもバイトは許してもらったんだよね?」



再びコクンと頷く。

首を傾げる香里奈に「その代わりね」と前置きして、土曜の夜を思い出しながら視線を上げていった。